研究会 (2014 年 12 月 27 日)

SICE 九州支部 制御理論と応用に関する研究会 共催
日時: 12/27(土) 13:00〜17:00

場所: 九州工業大学サテライト福岡天神
   (福岡市中央区天神1-7-11 天神イムズ11F)
   http://www.ims.co.jp/hall/detail/?shopNo=041
   http://www.kyutech.ac.jp/facilities/satellite-campus/

講演1-1: 結合非負システムの解析と設計
  1-2: 1入出力系のH∞制御における LMI を用いた性能限界の解析
    (蛯原 義雄, 京都大学; 13:00〜15:20)

講演2: 半正定値計画問題に対する面的縮小法
    (脇 隼人, 九州大学; 15:30〜16:50)

懇親会: 磯ぎよし 天神店 18:00〜
    福岡市中央区舞鶴1-9-23
    tel: 092-726-6302

参加者: 蛯原(京大), 脇(九大), 松尾(大分大), 佐藤(佐賀大),
    畑田(福大), 加藤(福工大), 延山, 瀬部(以上九工大)
                            (以上敬称略)


概要

1-1. 非負システムとは,非負の入力と非負の初期状態に対して,状態と出力が
     常に非負となる動的システムである.このような非負性は,資源,エネル
     ギー,製品,化学物質といった負の値を取り得ない物理量のやり取りを表
     すダイナミクスにおいて普遍的に現れる.非負システムの解析や設計にお
     いては,その非負性から通常のシステムに対しては成立し得ない“強い結
     果”が成立することが知られており,近年は凸最適化手法と絡める形で様
     々な興味深い研究成果が得られている.本発表では,重み付きL1誘導ノル
     ムを用いた結合非負システムの安定性解析,結合非負システムのパーシス
     テンス性,マルチエージェント非負システムのフォーメーション制御とそ
     の自動車群の車頭時間制御への応用に関する講演者の研究の一部を紹介す
     る.

1-2. 本発表では,連続時間1入出力系のH∞制御において達成可能な性能(性能限
     界)を,LMIを用いて解析的に表現する手法を提案する.H∞制御系設計の際
     に用いられる二つの正定行列が絡むLMIを,制御対称の不安定極·不安定零
     点の情報を用いて解析解が求まる形に変換することで,性能限界の下界値
     を解析的に表現することが可能となる.この手法により感度関数(1/(1+PK))
     や相補感度関数(PK/(1+PK))に関する良く知られた性能限界(H∞ノルムの下
     限値)の解析的表現が簡単に導かれることを示した後に,主結果として,
     P/(1+PK)の形で表される閉ループ系のH∞ノルムを限りなく小さくできるた
     めの必要十分条件が制御対象が不安定零点を持たないことであること,さら
     に制御対象が不安定零点を持つ場合には,達成可能なH∞性能の下界値を不
     安定零点と制御対象の伝達関数の不安定零点周りのテイラー展開の係数を用
     いて解析的に表現できることを示す.

2.    半正定値計画問題は線形計画問題の行列変数への拡張と言われるように
     線形計画問題の様々な性質を引き継いでいますが, 決定的に異なる点も
     あり, その一つが(強)双対定理です. 線形計画問題では実行可能解の
     存在の元で双対定理が成立しますが, 半正定値計画問題の場合はSlater
     条件と呼ばれるより強い仮定が必要です. このちょっとした違いは多くの
     場合で気にされていません. 一方で, 数値計算ではこの違いは大きく影響
     します. 線形計画問題ではほとんど数値誤差の影響に苦しむことはあり
     ませんが, 半正定値計画問題ではしばしば数値的に求解困難になります.
     このように数値的な困難に遭遇する理由の一つとして, 半正定値計画問
     題あるいはその双対問題がSlater条件を満たしていない, ということが挙
     げられます.
      最適化では, 特に半正定値計画問題に関しては, 20年くらい前にすでに
     このことが議論されています. そこでは, それ以前に提案されている面的
     縮小法がこの違いを理解・解決するための方法として議論されています.
     この講演では, 半正定値計画問題と面的縮小法を紹介し,時間の許す限り,
     最近研究しているH制御への応用を紹介したいと思います.


Last modified: Sat Dec 27 21:38:19 JST 2014